中古農機具買取コラム
農機具の売却で発生する税金とは?仕訳の方法や譲渡所得の計算例を解説

- 公開日
- 更新日
農機具を売却した際に譲渡所得が生じると、税金がかかります。
譲渡所得は、減価償却費や特別控除などを加味して算出するため、正しい計算手順を押さえておくことが大切です。
本記事では、農機具を売却した際の譲渡所得の計算方法を、さまざまなケースを例にあげて解説します。
仕訳例やその他の税金についてもまとめていますので、手元に残る金額を最大限に増やしたい方は参考にしてください。
目次
農機具を売却すると税金がかかる?
農機具の売却で税金が発生するのは「譲渡所得」が生じた場合です。
譲渡所得は、売却金額から譲渡時点の簿価や特別控除などを差し引いて算出します。
購入金額ではなく、減価償却累計額を加味した「譲渡日時点での資産価値」を基準に利益を計算することが特徴です。
なお、農機具の売却・下取りで得た利益は、原則として農業収入に含まれません。
毎年継続して行われる売買でない限り、事業所得ではなく譲渡所得(総合譲渡)として扱われます。
農機具売却時の譲渡所得の計算方法
農機具の売却で得た利益(譲渡所得)は、以下の計算式をベースとして算出できます。
- 農機具売却時の譲渡所得=売却価格−(譲渡時点の帳簿価額+購入時の運搬費など+特別控除)
譲渡時点の帳簿価額とは、農機具の購入金額から、減価償却累計額を差し引いた金額のことです。
ここでは、以下4つのケースにおける計算方法を解説します。
●ケース1:売却益が生じたが、譲渡所得がない
●ケース2:売却益が生じ、譲渡所得もある
●ケース3:売却損が生じた
●ケース4:2台以上の農機具を売却した
それぞれ見ていきましょう。
ケース1:売却益が生じたが、譲渡所得がない
1つ目の例として「2021年7月に300万円で購入したトラクターを、2025年3月に180万円で売却した」ケースを考えてみます。
ここでは、譲渡時の帳簿価額(2024年12月31日時点)が150万円だったと仮定しましょう。
まずは、売却益がいくら出たのかを求めます。
- 180万円(売却価格)−150万円(譲渡時の帳簿価額)=30万円(売却益)
不動産及び株式以外の資産を譲渡したときは、最大50万円の特別控除を受けられます。
売却益から特別控除を差し引いた譲渡所得は、以下のとおりです。
- 譲渡所得=30万円(売却益)−30万円(特別控除)=0万円
このように、売却益が50万円以下の場合は、最大限度の金額が控除されます。
計算結果が「ゼロ」になる場合は、課税所得がないため税金はかかりません。
参考:譲渡所得(土地、建物及び株式等以外の資産を譲渡したとき)
ケース2:売却益が生じ、譲渡所得もある
続いて「2019年10月に700万円で購入したコンバインを、2025年8月に300万円で売却」したケースを考えてみましょう。
譲渡時の帳簿価額が200万円だったと仮定すると、売却益は以下のように計算できます。
- 300万円(売却価格)−200万円(譲渡時の帳簿価額)=100万円(売却益)
所有期間が5年を超えている資産の場合、譲渡所得の金額は2分の1となります。
50万円の特別控除と合わせた課税譲渡所得の計算結果は、以下のとおりです。
- 譲渡所得=[100万円(売却益)−50万円(特別控除)]÷2(長期譲渡所得)=25万円
このように、計算結果がプラスになった場合は所得税がかかります。
所有期間の判定は「譲渡した年の1月1日時点」で行う点に注意しましょう。
ケース3:売却損が生じた
「譲渡時の帳簿価額が150万円だったトラクターを、120万円で売却した」場合、以下のように売却損が発生します。
- 120万円(売却価格)−150万円(譲渡時の帳簿価額)=−30万円(売却損)
譲渡所得は「損益通算」の対象になります。
損益通算とは、所得の赤字分をほかの所得の黒字から差し引ける制度のことです。
農機具の売却損を事業所得から差し引けば、課税所得が少なくなるため税負担の軽減につながります。
損失が生じたことを把握するためにも、農機具を売却したら早めに計算しましょう。
参考:損益通算|国税庁
ケース4:2台以上の農機具を売却した
2台以上の農機具を売却した場合、50万円の特別控除はトータルで適用されます。
たとえば、以下のトラクターとコンバインを同年に売却したケースを考えてみましょう。
| 項目 | トラクター | コンバイン |
| 購入日 | 2021年7月 | 2019年10月 |
| 譲渡時の帳簿価額 | 150万円 | 200万円 |
| 売却日 | 2025年3月 | 2025年8月 |
| 売却価格 | 170万円 | 300万円 |
同年に短期と長期の売却益があるときは、先に短期の売却益から特別控除を差し引くため、譲渡所得は以下のように計算できます。
●トラクターの譲渡所得=170万円−150万円−20万円(特別控除)=0円
●コンバインの譲渡所得=[300万円−200万円−30万円(※)]÷2=35万円
(※)50万円から、短期譲渡所得(トラクター)に適用した20万円を差し引いた金額
仮に1台の売却で利益が出ても、ほかの農機具で売却損があり、合計で赤字となる場合は譲渡所得税が発生しません。
農機具を減価償却中に売却した際の仕訳例
減価償却中に農機具を売却した場合は、売却益が生じたか否かで仕訳の方法が変わります。
●売却益が生じた場合の例
●売却損が生じた場合の例
上記2パターンの仕訳例を見ていきましょう。
売却益が生じた場合の例
取得価額が300万円、譲渡時の帳簿価額が150万円のトラクターを180万円で売却した場合を例にあげます。
直接法による仕訳では、固定資産から減価償却費を直
接差し引いて以下のように記入します。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
| 普通預金 | 1,800,000 | 車両運搬具 | 1,500,000 |
| ー | ー | 事業主借 | 300,000 |
一方、間接法による仕訳では、固定資産を直接減少させません。
減価償却累計額を計上し、これまでの償却額の合計を以下のように表示します。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
| 普通預金 | 1,800,000 | 車両運搬具 | 3,000,000 |
| 減価償却累計額 | 1,500,000 | 事業主借 | 300,000 |
農機具の売却益は、事業の収入ではないため、事業所得には関係しないものとして「事業主借」の勘定科目を使用します。
売却代金を現金で受け取った場合は「普通預金」を「現金」に変更して仕訳しましょう。
売却損が生じた場合の例
取得価額が700万円、譲渡時の帳簿価額が200万円のトラクターを150万円で売却した場合の仕訳例を見てみましょう。
直接法では、以下のように仕訳します。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
| 普通預金 | 1,500,000 | 車両運搬具 |
2,000,000 |
| 事業主貸 | 500,000 | ー | ー |
間接法による仕訳例は、以下のとおりです。
売却益が生じた場合と同様に、減価償却累計額を計上します。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
| 普通預金 | 1,500,000 | 車両運搬具 |
7,000,000 |
| 減価償却累計額 | 5,000,000 | ー | ー |
| 事業主貸 | 500,000 | ー | ー |
農機具の売却損は、事業損失とはせず「事業主貸」で処理します。
農機具を所有しているだけでかかる税金
トラクターやコンバインなどの農機具は「農耕作業用自動車」に該当するため、所有しているだけで軽自動車税がかかります。
ここでは、軽自動車税の基礎知識を見ていきましょう。
●軽自動車税の金額
●軽自動車税の課税タイミング
節税のポイントもあわせて解説します。
軽自動車税の金額
最高速度が時速35km未満の農耕作業用自動車は「年税額2,400円」の軽自動車税がかかります。
該当する農機具は、以下のとおりです。
●農耕用トラクター
●農業用薬剤散布機
●コンバイン
●田植え機
●農耕作業用トレーラ
●国土交通大臣の指定する農耕作業用自動車
最高速度のみで分類され、大きさや排気量には制限がありません。
なお、最高速度が時速35km以上の農機具は「大型特殊自動車」として、自動車税ではなく固定資産税の申告対象となります。
一部の海外製トラクターなどは該当しますが、国内で使用されている多くの農耕作業用自動車は、最高速度が時速35km未満です。
軽自動車税の課税タイミング
4月1日時点で、ナンバープレートを所有している方が課税対象となります。
現在所有している農機具を売却する際は、以下の観点でナンバープレートの返却時期を検討しましょう。
| ナンバープレート返却のタイミング | 課税の有無 |
| 3月末日まで | 翌年度の課税なし |
| 4月1日 | 本年度の課税なし |
| 4月2日以降 | 本年度の課税あり |
軽自動車税の場合は、4月1日に売却・廃車の手続きをすれば本年度の課税を避けられます。
一方、4月2日以降に返却すると、農機具を手放しても1年分の軽自動車税を納めなければなりません。
節税を重視する場合は、売却手続きのタイミングに注意しましょう。
まとめ:農機具の売却は税金を考慮した計画立てが重要
農機具を少しでも有利に売却するには、売却価格だけでなく、税金も含めて手元に残る金額を計算しておくことが大切です。
まずは買取業者に相談のうえ、特別控除やタイミングなどをふまえて売却計画を立てましょう。
買取業者を探す際は、アグリユースの一括査定が便利です。
約45秒の情報入力だけで、一度に複数の買取店へ査定を依頼できます。
専門のスタッフが丁寧にサポートしますので、買取サービスの利用が初めての方も安心してご利用ください。
中古の農機具・農業機械の買取をお願いしたくても、相場が分からなくて不安な方は多いでしょう。
そんな方には、一括査定がおすすめです。一括査定であれば、1回で複数の業者から見積りをとれます。さまざまな業者を比較することで、相場が分かるでしょう。農機具が複数台ある場合でも、一度に見積りがとれるので便利です。
農機具の買取業者を迷っている方は、こちらから一括査定を依頼してみましょう。



















